相続手続を開始する際に最初に着手するものとして、お亡くなりになった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本の収集、相続人(配偶者や子など)の現在の戸籍謄本の収集があげられます。
この作業の目的は、正当な権利を有する法定相続人を確定することにあります。
お亡くなりになった方の戸籍謄本を、なぜ「出生から死亡まで」収集する必要があるの?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
その理由は、ご遺族が知らない他の相続人(ちょっと言いにくいですが簡単に申せば、実は前妻との間に子がいたとか、実は認知した子がいたとか…)の存在の有無を確認するため、です。ちなみに、認知をすると認知をした人の戸籍に記録されますが、その後本籍地を移すなどで新たに戸籍が作られた場合、当該認知の記載は新たな戸籍にはなされません。したがって、「出生~」を揃える必要があるのです。
例えば、遺産の一部である銀行預金の分割を実行した後に、私も相続人だと正当な権利を有する者が現われ、なぜ勝手に分割を実施したのかと銀行に乗り込んで来られても銀行は困るわけです。
こうした事態を避けるため、銀行預金の遺産分割を実行する際に、銀行からも被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の提出(加えて相続人の方々の現在の戸籍謄本も)を求められます。
多くの方が結婚を機に新たに戸籍を作りますので、少なくとも2通、だいたい4通前後の戸籍謄本を収集することになり、一通り揃えるのに4-5千円程度を要します。
お亡くなりになった時の戸籍がある市町村役場に戸籍謄本を請求し、それに記載のある前の戸籍がある市町村役場に戸籍謄本を請求し、という具合に出生時まで遡っていきます。遠方の場合は、郵便請求の時間と費用も要します。
これを、銀行だけで数行、不動産や車をお持ちの場合は更に別途、その都度ご準備いただくのは、コストと労力が大き過ぎます。あっという間に4-5万円かかりそうです。
これを解決するために、国は「法定相続情報一覧図」(←クリックすると法務局の説明サイトに移動します)という非常に便利な制度を用意しています。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、相続人の現在の戸籍謄本や住民票、その他必要資料を法務局に提出すると、1週間ほどの審査期間を経て発行してもらえます。
被相続人及び相続人の戸籍謄本その他法定相続人であることを証明する書類に代わるものとして使用することができます。手数料は無料で、必要なだけ発行請求することができる、大変便利な制度です。
当所では、相続人の方々に安心していただくために、被相続人に負債がないことを確認することを推奨しており、この確認だけで3つの信用情報機関(銀行、登録済の貸金業、クレジットカード、信販の残高を確認します)に被相続人の情報を請求しますが、この際も法定相続情報一覧図が活躍します。上場株式を取引していた場合で、どの証券会社に口座を持っているのか分からない場合は、証券保管振替機構に法定相続情報一覧図を添えて情報開示を請求すれば、どの証券会社のどこの支店に口座があるかも調べることもできます。
当所では法定相続情報一覧図の作成を原則としており、まるごとパックに含まれています。